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スマート農業推進協会からのお知らせ

導入件数はこれから。確実に今後のスタンダードへ

スマート農業実践者に聞く〜スマート農業のリアル〜
オンライン開催:2020年5月28日(木)19:00〜20:00 

スマート農業の専門家は、実践者である農家さん。宮崎県新富町でスマート農業を取り入れて施設園芸でのきゅうり栽培に取り組む猪俣太一さんをゲストにお迎えし、スマート農業のリアルについてお話していただきました。

ゲスト:猪俣太一氏
ファシリテーター/稲田佑太朗(一般社団法人こゆ地域教育研究所)

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新富町きゅうり農家:猪俣太一氏

就農10年、独立して8年目の、新富町のきゅうり農家。約30a(3000㎡)の圃場で1日平均3000本を収穫する。新富町でいち早く若手農家でアグリテックを取り入れ、収量を20%アップさせた。

1分おきにデータ採取。データを元に環境制御

猪俣さんは、ビニールハウスでのきゅうり栽培管理にテクノロジーの技術を取り入れて5年目。ハウス内の温度や湿度、外気の温度や風速、風向きなど、1分おきにデータが蓄積されます。スマートフォンに送られるデータで状態を確認・判断しながら、温度調整や水の管理をしています。

コンピュータが採取したデータを元に、農家が判断してビニールハウスの自動開閉指示や水の管理等を行う、というのが、猪俣さんが行っているスマート農業の形です。

その他、ドローンによる薬剤散布や自動運転トラクター、水田の水管理などで、今後スマート農業は広がっていくだろう、と猪俣さんは予想しています。

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▲猪俣さんのハウス内ではさまざまなデータを常に採取、送信、保存されている

 

参加者とゲストのオンラインQ&A

猪俣さんの取り組むスマート農業についてお話しいただいた後、参加者からさまざまな質問がチャットで寄せられました。

“可能性が広がるスマート農業は、これからのスタンダード”

稲田氏(ファシリテーター):スマート農業を取り入れて、猪俣さんの作業はどのくらい変わりましたか?
猪俣氏:作業量は1割も減っていません(笑)。水の管理、天井の開け閉めくらいです。飲食店で言えば、タブレットで注文が取れるようになった、という程度ですね。

参加者A:スマート農業を導入して変わったことは何ですか?
猪俣氏:可能性が大きく広がったこと、ですね。コンピュータを使うことで複数箇所を一括して管理できるし、ボタン一つで作業ができるので圃場により時差が生じない。栽培面積を拡大した時の予行練習のためにも、今からやっておくことが大事ですから。

稲田氏:スマート農業を取り入れる農家さんは増えてきていますか?
猪俣氏:まだ少ないです。全国で5%くらいでしょうか。ただ、就農したいと言っている地元の若い人たちは、すでにスマート農業のことを知っているし、学んでいます。間違いなくこれからのスタンダードになっていくと思います。

“コストと収益のバランスを見極めて”

参加者C:導入するタイミングは?
猪俣氏:僕の場合はハウスを新設する時でした。なくても農業できるのに、コンピュータだけで120万かかりました。それをどう捉えるか、ですね。

稲田氏:抵抗感はなかったですか?
猪俣氏:どれだけいい機械を導入しても、自分に知識と技術がないと収量は上がりません。作業効率がよくなっても、収量に直結する訳ではないので、機械代120万をどう回収するかは真剣に考えました。

参加者D:AIは導入していないのですか?
猪俣氏:使っていません。データによっていずれAIが判断してくれるのかとは思いますけれど、コストに見合うかどうかは疑問です。

参加者E:AIを使ったスマート農業なら、誰が作っても同じものができるのですか?
猪俣氏:それがスマート農業の完成形だと思います。でも、農家って実はみんなと一緒のことはしたくないと考える人も多いんです。自分の色をどう出していくかも課題と考えていますね。

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“現場の意見を取り入れたスマート農業の開発を”

稲田氏:スマート農業に一番求めるものは?
猪俣氏:外見より、働いてくれる機械、壊れない機械が一番ですね。最近の機械はデリケートで壊れやすくて、昔の農機具ほど壊れないって言われますから。エンジニアさんも農家さんの声を聞いて機械やシステムをつくるのが一番早いですよ。

稲田氏:新富町にはスマート農業推進協会もあり、農家と企業が近く意見も反映されやすいですよね。
猪俣氏:はい、僕も入っている「儲かる農業勉強会」のメンバーなら、提案されたら使ってみようか、と受け入れると思います。ベンチャー企業さんたちの参考になるのでは。

“国も企業も、スマート農業を推進中”

稲田氏:最後に、みなさんにメッセージをお願いします。
猪俣氏:スマート農業に関しては、今まさに国も企業もいろんな研究や取り組みを推進しています。現場にはまだ浸透していませんが、使うと農家が楽できる部分は確実にあります。日本の農業系大企業が海外ベンチャーに投資したりと、これからますます進んでいく分野。ただし日本の農業は個人農家が多く、個人では100万円を超えると現実的には導入しづらいかな、というのが今の感覚ですね。

 

※次回の「儲かる!スマート農業TALKS」は、ドローン事業で活躍されている『セキド宮崎中央』の安藤光広氏をお迎えして2020年6月25日にオンライン開催いたします。

 

ライター:矢野由里

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