お知らせ

スマート農業推進協会からのお知らせ

食と農の未来を切り開く農業DX。農業課題を解決する方法とは?

宮崎県新富町に設立されているスマート農業推進協会の公開オンライン勉強会が開催されました。スマート農業推進協会は、全国から農業に関する知見を集結し、地方からスマート農業を推進している団体です。

日本は農業人口の高齢化と人口減少により農家の後継者や担い手不足が深刻化しています。
今後生産者が半減していくという予想がある中、日本の農業が稼げる産業に進化するために注目されているのがスマート農業です。

今回は、一般社団法人日本農業情報システム協会 代表理事の渡邊 智之氏をゲストに迎え、農業のデジタル化についてお伺いしています。「農業をデジタル技術でかっこよく稼げて感動があるものに」をメインメッセージに、スマート農業のあり方についてお話していただきました。

内容

  • 農業課題を解決する秘訣とは
  • 最新のテクノロジーを知りたい
  • 自治体のサポートは?
  • 農業用ロボットの詳細を知りたい
  • 地方xスタートアップで働いてみたい

<スマート農業推進協会 オンライン勉強会>
開催日時:2021年6月8日 (火)
テーマ:農業課題を解決する方法ー楽しく稼げるスマート農業会議

【講師紹介】※敬称略

渡邊智之
一般社団法人日本農業情報システム協会 代表理事
スマートアグリコンサルタンツ合同会社 代表/CEO
特定非営利活動法人ブロードバンド・アソシエーション 事務局次長

1993年大手IT企業に入社。宅内交換機、宅内電話機の開発に従事、その後事業企画部門へ異動し、医療・動物医療・農業に関するイノベーション創造に深く関与。主に各種センサーによる生育関連データ蓄積及び作業記録アプリ等、「スマート農業」関連ソリューションの開発を主導。その際、自分自身が農業現場の実情を知る必要があると考え、実際に農業法人に飛び込み農業を学んだ

2012年から2015年まで農林水産省で「スマート農業」推進担当として政府の「スマート農業」関連戦略策定や現場の普及促進に努める。その経験から慶應義塾大学 SFC 研究所の研究員として「スマート農業」関連の研究にも関わり、農林水産省や自治体の「スマート農業」に関する会議にも有識者や座長としても参画している。

2014年、ICT や IoT、AI など「スマート農業」の利活用促進、次世代農業人材の育成を目的とした業界団体、日本農業情報システム協会(略称JAISA)を設立し、代表理事に就任。(2019年一般社団法人化)また、2018年にはスマートアグリコンサルタンツ合同会社設立、代表/CEOに就任。

食と農の未来を切り開く農業DX:農業をデジタル技術でかっこよく稼げて感動があるものに

まずは渡邊さんより、農業へのデジタルの導入について語っていただきました。 

Q:今回のテーマである「農業DX」とはどのようなものなのでしょうか?

A:農業DXとは、農業や食関連産業の分野において、デジタル技術の利活用により、生産から消費に関わるあらゆる人々のビジネスや生活を良い方向に変化させることです。

そして、この農業DXを活用して、農業をかっこよく(K)稼げて(K)感動があるものに(K)ということで、新3K農業というのをミッションに掲げています。

Q:もともと農業とは無関係のお仕事をしていたところから、現在のように、農業のデジタル化を推進する立場になるまでの歩みについて教えて下さい?

A:元々、民間企業出身で、農業とは全く関係のないところで生きていました。その中で、農家と知り合うきっかけに恵まれ、農業について勉強したことで、農業は楽しいという気持ちが芽生えたのです。

このように、元々民間企業出身でありながら、大学の研究員や公務員という立場を経験し、現在は農業と関わる立場となりました。そのため、一人で産官学+農を連携できるのは私自身の大きな強みです。農家とIT技術者の通訳という思いから、スマートアグリ・エバンジェリストと名乗っています。

Q:農業の一番の課題はなんだと思いますか?

A:農業の一番の問題は高齢化というのは、誰もが話しているものでしょう。そして、その解決にロボット農機が有効というのが現状の一般的な解釈だといえます。しかし、なぜ高齢化が進んでいるのかという根本的なところから考えていかなければなりません。

私自身は、試行錯誤や創意工夫が収益に反映されない点が農業の一番の課題だと考えています。だからこそ、ITで農家の努力を収益につなげたいという気持ちです。

Q:スマート農業を一言で説明すると?

A:スマート農業については、「楽」「農業者がバカになる」「大規模農業者のためのもの」「誰でもお金を払えば効果が出る」などの誤解がよく生じています。

しかし、スマート農業とは次の2つのポイントを両方満たすものです。

①営農のリスクを最低限にして最大限の収入を得ること
②自社ならではのノウハウを確立し、ブランド化や事業継承に役立てること

だからこそ、スマート農業には、しっかりとしたビジョンが大切で、5年後・10年後の自分の農業像や事業継承イメージがなければなりません。

Q:現在は、人材育成に力を入れているということですが、スマート農業を行うための条件というのは何かありますか?

A:スマートファーマーに必要な意識7か条というのを提唱しています。

① ビジネスとして最大限の収入を得るという意識
② 組織として最大効果を出そうという意識
③ 歩留まりの向上、生産ロスを削減する意識
④ 自分たちならではの生産方法を確立しマニュアル化する意識
⑤ 生産期間中のコストを常に管理する意識
⑥ 地域の生産物はできるだけ地域で消費する意識
⑦ 未来の人々のことも考え自然環境を配慮する意識

パネルディスカッション

イベントの最後には、以下お二人もお迎えし、パネルディスカッションが行われました。

【パネラー】(敬称略)

    • 堀口大輔

 スマート農業推進協会 広報拡散部長
 鹿児島堀口製茶有限会社 代表取締役副社長

    • 西野太一

 農業ロボットベンチャー AGRIST株式会社

スマート農業の将来性や普及の推進力など、とても興味深いテーマについて、それぞれの立場からご意見をいただきました。

また、音声SNS「クラブハウス」と農業との親和性についても大きく盛り上がりました。

渡邊:最近、クラブハウスというものに積極的に参加しています。実は、クラブハウスのメンバーの中には意外と農家が多いのです。音声なので、農作業をしながら参加できるという側面が影響しているのかもしれません。そして、クラブハウスという新しいものに飛びつく人々なので、スマート農業の視点のある農家が多くいます。

堀口:クラブハウスには登録はしていましたが、参加したことはありませんでした。

西野:クラブハウスの話は目からうろこです。ただし、自社でリモート勤務となった際に、音声をつなげながら雑談をするということを経験したので、農作業をしながら他の農家と話をするということにも納得です。

堀口:現在、ロボット摘採機の遠隔監視をちょうど実証しているところです。正直なところ、現状では人間だけのオペレーションでも可能ですが、将来的な導入を見据えて、今から導入に向けて取り組んでいます。

渡邊:堀口さんから「将来を見据えた実証」という言葉がありましたが、ロボットを現場に導入するまでには時間がかかることをデメリットとされる方は多くいらっしゃいます。

しかし、ロボットに限らず、スマート農業の導入については、近い将来農業をやめる高齢層に目を向けるのではなく、後継者のいる層や、将来的にも農地や収益性の拡大可能性がある農家をターゲットにする必要があります。今後人手が足りないと予測されている部分に、不確実な人材ではなく、農業ロボットを導入し、農業のプレゼンスを挙げていくということです。

西野:経営規模が拡大したり、法人化が進んだりする中では、農業ロボットの導入のハードルが下がります。しかし、中小規模に対してどのように普及を進めていくのかといった点は今後の課題ではないでしょうか?

渡邉:中小規模農家へのアプローチでは、JAとの協力が鍵となります。具体的には、JAにロボットを購入してもらい、JAから各農家にリースするイメージです。この仕組みであれば、JAからの会員流出を回避することにもつながります。

堀口:JAは活用の幅が広いですね。現在でも、ガソリンスタンドとして機能している支所があります。今後、農具の洗い場としての提供、大規模農家から小規模へのスマート農具の時間貸し出しの斡旋など、大きな可能性を秘めていると感じました。

西野:私達が開発しているロボットはあくまでも収穫に特化した手段です。つまり、ロボットを作ることが主目的ではなく、テクノロジーを使って課題解決することを目指しています。

つまり、JAのように活用できるものは活用するイメージは共通して持っているということです。ロボットをきっかけに、データを収集したり、労働時間を削減して空いた時間で経営についてもっと考えるなど、ロボットと他の側面との化学反応に期待しています。

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