お知らせ

スマート農業推進協会からのお知らせ

人気観光農園に学ぶ、農業課題を解決する方法とは?

宮崎県新富町に設立されているスマート農業推進協会の公開オンライン勉強会が開催されました。スマート農業推進協会は、全国から農業に関する知見を集結し、地方からスマート農業を推進している団体です。

日本は農業人口の高齢化と人口減少により農家の後継者や担い手不足が深刻化しています。今後生産者が半減していくという予想がある中、日本の農業が稼げる産業に進化するためにに注目されているのがスマート農業です。

今回は、メーカーから農業起業家へ転身をした『株式会社ブルーベリーファームおかざき』の畔柳 茂樹氏をゲストに迎え、観光農園としての成功の秘訣をお伺いしています。「好きな仕事があなたの人生を変える」をメインメッセージに、新しい農業のあり方についてお話していただきました。

内容

  • 農業課題を解決する秘訣とは
  • 生産性の高い農業に仕上げるコツ
  • 失敗しない農業のために必要なこと
  • 好きな仕事があなたの人生を変える
  • 自由時間の多いメリハリのある農業とは

<スマート農業推進協会 オンライン勉強会>
開催日時:2021年5月25日 (火)
テーマ:農業課題を解決する方法ー楽しく稼げるスマート農業会議

【講師紹介】※敬称略

畔柳 茂樹
株式会社ブルーベリーファームおかざき 代表取締役

株式会社ブルーベリーファームおかざき 代表取締役 畔柳 茂樹

農業起業家。早稲田大学政治経済学部卒。

自動車部品最大手のデンソーに入社。40歳で事業企画課長に就任したが、ハードワークの日々に疑問を持つようになり、農業への転身を決意。2007年45歳で独立、ブルーベリー農園を開設。

起業後は、デンソー時代に培ったスキルを生かし、観光農園、無人栽培、ネット集客の仕組みを構築。今ではひと夏1万人が訪れる地域を代表する観光スポットとなる。わずか60日余りの営業日で、会社員時代を大きく超える年収を実現。

近年は、2017年に初の著書「最強の農起業!」を出版(国内重版8刷、中国、タイでも出版され、計27000部)。翌年、地方創生の農業成功事例として台湾政府からに招聘され講演。

オンライン講座「成幸するブルーベリー農園講座」の参加者は延べ1427人、ブルーベリー観光農園が全国に83か所が開設。メディア取材・報道は140回超え、メインメッセージは「好きな仕事があなたの人生を変える」。

ブルーベリーファームおかざき
著書「最強の農起業!」

最強の農企業:株式会社ブルーベリーファームおかざき成功の裏にあるのは徹底した生産性の高さの追求

生産性とは

まずは、畔柳さんより、観光農園ビジネス成功のコツを語っていただきました。 

Q:もともと農業と関わりがなかったところから、農業起業家に転身したきっかけとは?

A:会社員としてのハードワークの日々に疑問を持つようになり、自分らしく輝くために農業への転身を決意しました。

Q:農園には遠足から、家族連れ、女性グループ、カップルまで幅広く来場。ひと夏に1万人以上が来場する人気観光農園の秘密とは?

まずは、女性の目線で考えることが大切です。そのため、ブルーベリーだけでなく、パフェやスイーツピザなどのフードメニューも展開しています。

Q:『最強の農企業!』という本がベストセラーとなっていますが、戦わない農園運営の工夫を教えて下さい。

従来の観光農園と全く正反対の農園にするというのをコンセプトとしています。具体的には、団体ではなく個人客をターゲットにすること、時間無制限とし慌ただしさをなくすこと、そして画一的ではなく、一人ひとりにきめ細かいサービスを提供することです。

Q:生産性の高い農業とするために、具体的にどのような施策を行っているのでしょうか?

従来型の農業の大きな問題点として、極めて低い生産性と収益性というものが挙げられます。私自身、デンソーで会社員をしていた際には、常に生産性向上を意識していました。そのため、農園運営でも、生産性については非常に大切にしています。

労働生産性とは、付加価値(売上ー購入費)÷労働時間で算出するもの。私のブルーベリー観光農園では、IT集客で分子を大きくし、無人栽培で分母を小さくすることで、生産性を飛躍的に向上しているのです。

Q:農園では「観光農園」「無人栽培」「IT集客」を3本の柱に据えられていますが、それぞれについて詳しく教えてください。

A:観光農園では、収穫作業が不要であるにもかかわらず、通常の出荷価格の3−4倍で売ることができます。これは、作物ではなく体験を売っているからこそです。従来型出荷農園(ブルーベリー)では、農作業時間の3分の2を収穫が占めており、これをなくせるのは大きいでしょう。

また、養液栽培とすることで、無人栽培を達成。ブルーベリーの成長速度も品質も向上させました。

お客様の59%がインターネット情報から、16%がメディア情報から、農園を訪問しているというデータがあります。サイトを充実させたり、メディア戦略を立てることが重要だということがわかるでしょう。とにかく知っていただくということを第一に農園運営をしています。

Q:2020年から「成幸するブルーベリー農園講座」をオンラインで実施中ですね。

A:入門編・農園開設編・集客編の3部構成で12ヶ月で農園運営に関するすべてを学べる講座です。コロナ渦をきっかけにオンライン開催をはじめましたが、遠方の方や女性の方の参加が格段に増えました。

Q:農業畑ではない人が、農園運営に参入する際にありがちな失敗というのはありますか?

A:好きなことかどうかを見極めることが大切です。楽して儲けることだけを目的とする人はやめたほうがいいでしょう。また、観光農園は女性の目線が大切なので、身近なところでアドバイスをしてくれる女性(配偶者)の存在は大きな強みとなりますね。

パネルディスカッション

イベントの最後には、以下お二人もお迎えし、パネルディスカッションが行われました。

【パネラー】(敬称略)

    • 堀口大輔

 スマート農業推進協会 広報拡散部長
 鹿児島堀口製茶有限会社 代表取締役副社長

    • 高橋 慶彦

 農業ロボットベンチャーAGRIST株式会社 取締役COO 兼 人事・組織開発責任者

農業ビジネスの将来性など、とても興味深いテーマについて、それぞれの立場からご意見をいただきました。

従来の農家では、生産性について議論することが少ないものです。農家の世界では、新しいことを導入することに抵抗感を持つ方が多い、そもそもこれまでのやり方を変えるという概念がないという意見もありました。

畔柳:モノ消費ではなく、コト消費が今後増えていくはずです。しかし、農家の数はどう考えてても減っていくことが予測されます。この点、観光農園ビジネスの幸先は明るいといえるでしょう。

高橋:農家の現状の最大の悩みを解決するのが、収穫ロボット。この問題が解決した先には、いかに売るかというステージに入っていくと思います。その戦略を農家と一緒に考え、提案をすることになるでしょう。ロボットを遠隔操作した、遠隔観光農園の試みも面白いですね。

堀口:今回のオンライン勉強会のように、生産の場を離れることなく、様々なことを学べる時代になったのはありがたいですね。私自身、海外など物理的に遠くへ出ていた時よりも、今のほうがたくさんのことを吸収できていると感じています。ただし、農家の方には、従来のやり方が染み付いていることに注意が必要です。そもそも困っているという感じ方をしていないともいうことができるでしょう。この状態で、新しい方法を話しても伝わらないことが多いのです。

畔柳:オンラインセミナーでは「好きなことを仕事にする」を強調して伝えています。これは、嫌な仕事をしていては、その人の眠っている才能を引き出すことは難しいためです。ブルーベリーの養液栽培を例に挙げると、最適な環境を提供してあげれば、素晴らしい成長を見せてくれます。人間も同じで、その人の才能が目覚めさせるためには、やはり好きなことをすることが一番です。この部分についても、オンラインセミナーでサポートしていきたいと考えています。

高橋:エンジニアリングの視点で農業に参入する際には、いかに農家のニーズを吸い上げるかということが鍵になります。そして、このためには、農家の人と一緒に動くことが不可欠です。実際、AGRISTでは、目の前にビニールハウスがあることが強みで、農家の声を聞きながら開発研究を進めることでスピード感のある成果を上げています。

堀口:新しい情報を手に入れやすくなった現在、これらの新しい情報をいかに多くの農家で共有するかを考えていく必要があるでしょう。そのためには、まずは信頼性の構築です。信頼性なくしてはどれだけ有用な情報であっても耳を貸してもらえません。一方で、信頼性さえあれば、SNSやLINEなどの媒体で情報を共有・拡散しやすい時代になっていると思います。

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