お知らせ

スマート農業推進協会からのお知らせ

無理なく、柔軟にスマート農業。魅力化を図り持続可能な産業へ

スマート農業推進協会
オンライン講座
2020年7月16日19:00〜20:00

鹿児島県志布志市で創業72年。茶生産から加工販売、海外輸出、さらには地元でイベント開催や雇用創出にも力を発揮する「鹿児島堀口製茶有限会社」。同社は今、無人で茶の摘菜(茶摘み)をする「無人摘採機」を試験運用中。農林水産省「スマート農業の開発・実証プロジェクト」に採択され、IoT活用による経営の見える化など4つの項目に取り組んでいます。
これまで注力してきたIPM環境保全型農業(※1)とスマート農業をかけ合わせ、茶業を次世代へつなげていく農業界のトップランナー。同社の活動から見えてくるスマート農業の今を聞きました。

(※1)IPM環境保全型農業/農薬や化学肥料に頼らない栽培方法。同社では水や風圧で病害虫を吹き落とす機械、また雑草を蒸気で枯らす機械など、数台のオリジナルマシンが活躍しています。
▲右側が堀口大輔さん

<今回のゲスト>
■堀口大輔氏
鹿児島堀口製茶(鹿児島県志布志市)代表取締役副社長
https://www.horiguchiseicha.com/
<ファシリテーター>
■稲田佑太朗
一般社団法人こゆ地域教育研究所 代表理事

茶葉の収穫はロボットが活躍中

稲田氏(以下、敬称略):ロボット摘採機(無人摘採機)を導入したきっかけは?
堀口氏(以下、敬称略):当社が少しずつ栽培管理やデータ収集などでIoT化を進めていたところ、お茶業界でもロボット化が進むなか、ロボット摘採機を試験的に使ってみないかという話がありました。価格が合うかどうか、また農業人口減少など農業課題解決の観点からも、実証に取り組んでみようと考えました。

稲田:今のスマート農業の現場はどういう状況でしょうか?
堀口:農林水産省の「農業機械の自動走行に関する安全性確保ガイドライン」における、レベル2「有人監視での自動化・無人化」の状態です。現場の茶園に1人がいて監視しながら、ロボット摘採機を稼働させています。そもそも農業者が使いこなせるのかという思いもありましたが、実証に取り組むなかで1人で2台動かすことも可能だと感じるようになりました。人が現場にいない遠隔操作となるとAIの登場、インフラでは5Gが必要。今後実証されていく案件でしょう。

▲1人で2台の摘採機を操作することも可能

稲田:ロボットと人が伴走するなかで、残す作業、任せる作業はどう区分しますか?
堀口:収穫自体はロボットで十分可能です。摘む高さの設定は人が判断して設定しており、ここがキーポイント。画像解析で摘採の時期を判断したりということは、他地域ですでに出てきているようですが。

人を把握し、適材適所。スマート農業との掛け算で効率アップ

稲田:スマート農業は資金もかなり必要では?
堀口:もちろん補助金なども活用しての導入でした。摘採機は大型の機械ですので、人が乗るこれまでのタイプでもかなり高額。プラス100〜200万で無人ロボットが購入できるなら検討の余地がありますが、2〜3倍かかるとなると、厳しいですよね。
稲田:現場のスタッフさん、農家さんたちは、抵抗なく受け入れてくれましたか?
堀口:機械類の得手不得手はあるし、能力は人それぞれです。全員ができる必要はありません。IoTなどスマート農業の分野は比較的若い人は得意だし、でも年配の人でもやってみたいと思う人もいます。今は変革の時。柔軟に考えて対処する必要がありますよね。

▲タッチパネルの操作でロボット摘採機に指示を出す

稲田:なるほど。人の強みを潰さない形で取り入れることは大事ですね。
堀口:IT化すること自体が目的ではなく、今大切なのはお茶生産のための栽培管理です。複数のスタッフで作業するので、それぞれの特徴を把握して現場をうまく回すことができると、スマート農業導入により非常に効率が良くなります。

スマート農業の浸透、波及に必要なのは、「専門家によるサポート」と「発信」

稲田:人手不足は喫緊の課題。これから農業や茶業界が人気産業となるには、どうしたらいいでしょう?
堀口:我が社は栽培管理や市況など、様々なソフトを使っていますが、IoTをもっと活用できるように、メーカーさん同士が協力してソフトをつなげること。そして、現場に新しい農業を浸透させるには、営農指導者のようなスマート農業の専門者によるサポートが必須だと思います。
稲田:若い人はスマート農業をかっこいいと捉えるのでは?
堀口:スマート農業がもっと進んで、若者にも農業に興味を持ってもらいたいですね。そのためには私たちがやっていることをわかりやすく伝えることも必要です。弊社の社長は「遊び心も必要だ」と言って、オリジナルの農業機械5台(写真)を「茶畑戦隊 茶レンジャー」と名付けました。わかりやすく関心を引き、またSNSなどで活動を伝えたりイベントを仕掛けたりしながら、伝えたい人にしっかり伝えていくことを心がけています。

▲親しみのわくネーミング「茶畑戦隊 茶レンジャー」
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日本における茶産業という、伝統を受け継ぎながら次世代へ引き継ぐための変革の道を進む同社。日本の農業の進化を常に俯瞰で捉え、その発展を牽引するまさにトップランナーとして、これからもその活動から目が離せません。

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