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スマート農業推進協会からのお知らせ

農業課題を解決する方法ー楽しく稼げるスマート農業会議ーゲスト:パナソニック株式会社ロボティクス推進室室長の安藤 健氏

宮崎県新富町に設立されている、スマート農業推進協会の公開オンライン勉強会が開催されました。スマート農業推進協会は、全国から農業に関する知見を集結し、地方からスマート農業を推進している団体です。

日本は、農業人口の高齢化と人口減少により、農家の後継者や担い手不足が深刻化しています。今後生産者が半減していくという予想があるなか、日本の農業が稼げる産業に進化するために注目されているのがスマート農業です。

今回は、パナソニック株式会社ロボティクス推進室室長 安藤 健氏をゲストに迎え、ロボティクスの新しい可能性と、Well-beingを用いた人とロボットが共創する社会の実現についてお話していただきました。

内容

  • ロボティクスの新しい活用について
  • 技術によるWell-beingとは
  • オープンイノベーションについて

<スマート農業推進協会 オンライン勉強会>
開催日時:2022年1月19日 (水)
テーマ:最先端のテクノロジーを学ぶ「スマート農業会議」
現場の実践者らの生の声が聴ける人気講座がオンライン開催

【講師紹介】※敬称略

パナソニック株式会社ロボティクス推進室室長
安藤 健

パナソニック株式会社ロボティクス推進室室長。博士(工学)。 早稲田大学理工学術院、大阪大学大学院医学系研究科を経て、20 11年にパナソニック入社。ヒト・機械・ 社会のより良い関係に興味を持ち、 一貫して人共存ロボットの研究開発から事業開発まで従事。 自己拡張技術によるWell-beingの実現を目指すAug Lab、オープンイノベーションによりロボティクス事業創出する Robotics HUBの推進責任者も務める。 日本機械学会ロボメカ部門技術委員長、経済産業省各種委員、 ロボットイニシアティブ協議会副主査なども歴任。「 ロボット大賞経済産業大臣賞」「IROS Toshio Fukuda Young Professional Award」など国内外での受賞多数。Twitter(@ takecando)、noteで最新取組も発信。DIGIAT L X「Well-beingな社会に向けたロボットの創り方」 にて連載中。

ロボティクスの新しい活用について

世界的に見ても、人口減少は遅かれ早かれやってくると言われています。いわゆる「働き手」と言われてる、メインで捉えられてきた人口層が減っていくと同時に、65歳以上の高齢者の比率がだんだん増していくなか、社会のモデルをどういう風に維持し続けるのかというところが課題となっています。こういった背景から、パナソニックでは「ロボティクスを使って解決していけないだろうか」という取り組みを行っています。

パナソニックでは、大きく分けて2つの取り組みを掲げているそうです。1つ目は、IoT/ロボティクス領域を使ってフィジカルに生活や社会を良くしていくこと。2つ目は、低炭素社会の実現やエネルギーの多様化など、エネルギー領域の取り組みを加速させていくことです。

パナソニックはこれまで、ロボティクスの取り組みにおいてサービスや介護・医療、農業、インフラなど、さまざまな分野で幅広く開発を行っています。「ロボットをどういう風に開発すれば商品としてお客様に使っていただいて役に立つのか、というところを今トライアルしている状況です」と安藤氏は話していました。

技術によるWell-beingとは

ロボティクスによる自動化の取り組みだけでなく、「人間が自分でしたいこと」「こういう自分でありたい」という状態へ視点していくなど、経済合理性と個人のQoLを両立したWell-being(よい状態)をサポートするロボティクスの開発が必要となっています。ロボットがすることと人がすることのバランスを取り、人や家族、組織ごとの最適を、自動化という視点以外でもサポートしていくことが必要になっていくと考えられるでしょう。

また、今までのWell-beingは「自分がいかに幸せになるか」という考え方が多いのですが、これからのWell-beingは、決して個人が幸せになるという話ではありません。人と人とのつながりをどう支援していくのか、もしくは人と社会、企業も含めたコミュニティをどういう風に作っていくのかが課題です。そのなかで、テクノロジーを活用して便利でありながら地球や環境、人以外の生物といかにして共存しあえる社会を作っていけるのか、というところが非常に大きな課題になってくると言えます。

オープンイノベーションについて

2015年からパナソニックとWHILL株式会社が共同してオープンイノベーションを行い、ユニバーサルなロボティックモビリティの開発を行っています。パナソニックが作る安全性や汎用性の高い移動制御技術と、WHILLが作るデザイン性の高いモビリティや高い走破性を結びつけることで移動が困難な方に役立つのではないか、ということでスタートされたそうです。

羽田空港国際線での実証実験を行っており、「実運用想定評価によるお役立ち可能なソリューションを目指しています」と安藤氏は話していました。

パネルディスカッション

イベントの最後には、農業ロボットベンチャーAGRIST取締役・最高技術責任者である秦 裕貴をお迎えし、パネルディスカッションが行われました。

こゆ財団/高橋:掲げている組織のビジョンを、スピードを維持しながら束ねていくっていうのはすごく大変だと思います。そういうときに一番大事にしていることはどんなことですか?

AGRIST/秦:そもそも僕らって何をすべきなんだっていう原点を忘れないところを大事にしていますね。その原点はやっぱりお客さんである農家さんを幸せにすることかなという風に考えています。議論になったときにも「これって農家さんにとって幸せなのかな」と立ち返ることは要所要所で意識していますね。

こゆ財団/高橋:これは安藤さんにとっても同じ部分はありますか?

安藤:やっぱり「誰のために仕事してるんだ」という「誰」という一人を特定しようとしています。例えば、農業ロボットだったら「農家」とするのはやめて「誰だ」というのを絞り込んだうえで、それが今必要なのかどうなのかというところをしっかり考え、議論しています。

こゆ財団/高橋:その先に多分、Well-beingという言葉があるんですね。安藤さんは何を一番大切にされているのか、どういうきっかけでそれを共有しようとしていますか?

安藤:「大切な人が困ったときに何をしたいですか」っていうことを頭の中に入れています。そのためには、大切なことをしっかり理解しておかないとできないし、結局理解できないということもちゃんとわかっておくということが大事になってきますね。

こゆ財団/高橋:秦さん、いよいよロボットを世に出していくフェーズに入っていってると思うんですけど、今一番の課題はどんな部分ですか?

AGRIST/秦:農家が求めているものを、求めているコストで出すというところが一番難しいところかなと思っています。

安藤:まだまだロボットは、人とのコスト競争になると厳しいと思います。その時に改めて考えないといけないのは、「本当にロボットでやらないといけないことか」ということに立ち返るということです。ロボットで解決したくなるが、本当にロボットで解決しないといけないのかっていうのを極限まで問い詰めるということが必要です。

こゆ財団/高橋:AGRISTの場合だと、実際に農家さんと一緒にアドバイスをもらいながら農業の現場のすぐ隣でロボットを作っているということもあると思います。スマートタウンで言うと、町全体で異なる立場の住民の皆さんがやんわりと「こういう町になったらいいよね」ということを共創するということになるわけですよね。そのスケールでどうやったら実現できるんだろうというのを安藤さんに聞いてみたいと思います。

安藤:大事なことは「AGRISTさんのロボット」という存在にしないことだと思うんですよ。これは「私たちのロボット」なんですと。ロボットとかAGRISTさんが連携してやってますっていう話ではなくて、それがワンチームで融合していて、そのチームの中の一つにロボットが入っているくらいの「私たち感」が大事なんじゃないかなと思いました。

AGRIST/秦:以前からロボットって人々の夢と期待が結晶になったときに、ロボットって呼ばれちゃうなって思っていました。それが本当に「私たちのもの」に馴染んでいくと「機械」とか「装置」と呼ばれるようになるなって思っていて。改めてAGRISTのロボットではなくて、馴染んだ当たり前の機械になっていくところを目指してやっていきたいなという風に思いました。

安藤:自分自身がやっぱり楽しい状況になっていないと、他の人のことまで考える余裕もないと思います。色んな人のフェチをそれぞれが堪能できるような、そんな社会を作っていけたらいいなと思っています。

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